前へ   次へ
ホーム > 遠征レポート > アリランレース2009

[番外編] アリランレース 2009


報告: 西野 隆文

このゴールデンウィークに、アリランレース(釜山→博多、110マイル)に参加してきました。当初、唐津のラジアルプレワールドに行くつもりだったので、アリラン参加はあきらめていたのですが、日程を見てみるとアリランレースのフィニッシュが早ければ唐津に間に合うかもしれないことがわかり、我ながら前代未聞のアリラン~唐津ダブルキャンペーンとなりました。以下、その一部始終。

4月25日 往きの回航開始。船はベネトーの35ft <Risotada>号。朝、土砂降りの中、新西宮YHにて食糧や備品などを積み込む。逆潮になる前に明石海峡を抜け、家島の南、小豆島の北を通って夕方に牛窓YHに到着。雨もあがる。家島のあたりは海苔網だらけで航行に苦労する。回航はほとんどが機走。風向きがよければ機帆走。

4月26日 朝、牛窓YHを出発。いきなりほぼ真向かいの強風。南西に進み、そのまま備讃瀬戸航路に入る。風は真向かいで40ノットくらいまで上がる。スプレーが激しく、サングラスがないと目を開けていられない。備讃瀬戸航路は、以前通った時とくらべると本船の数がかなり少なく、がらがら。
その日の宿泊先であった豊島は波が悪く、着岸できないとのことで、弓削(ゆげ)に入港。弓削島の宿舎はやや高台にあり、展望風呂から眺める瀬戸内海は絶景。おすすめです。

4月27日 朝、弓削島を出発。ようやく天候もおさまる。村上水軍の本拠地・宮窪(みやくぼ)瀬戸を抜け、続いて音戸(おんど)瀬戸を通り、夕方に広島の観音マリーナへ到着。

4月28日 朝、観音マリーナを出発。宮島の北を通り、厳島神社を海上から参拝して南へ向かう。大畠瀬戸を通り、周防灘を西に進む。これが結構長い。
夜、関門海峡の手前まで来るが、早鞆(はやとも)ノ瀬戸(関門海峡の一番狭いところ、関門橋の下)が8ノットの連れ潮で、その後11ノットまで上がる、との予報。連れ潮が速すぎると操船困難なので潮待ちをすることに。

4月29日 午前2時ごろ、関門海峡を通過。関門海峡を通過するのは初めてだったが、とんでもないクランクコースで、夜は暗く、標識(赤や緑のブイ)をよく見ていないとコースをはずれてしまう。本船が少なかったのは幸いだった。宮本武蔵で有名な巌流島は関門海峡の中にある。
朝、めんたいカップで知られる相ノ島の横を通る。初めて相ノ島を見たが、思ったより大きな島。昼前に博多の小戸YHに到着。小戸YHでは、元・芦屋FのT田さんが待っていてくれて、T田さんの車でメシ・フロ・買い出しに行く。T田さん、ありがとう!
レースメンバーの後発隊も合流。レーザーを積んだ私の車は前もって後発隊の人に預けてあり、この日、小戸まで乗ってきてもらう。車はフィニッシュまで小戸YHの駐車場に停め、その間、回航には必要だがレースには不要なものを保管する物置として使用。
深夜、小戸YHを出発。私にとって未踏の地・対馬に向かう。

4月30日 朝、対馬の厳原(いづはら)に着く。海保の立ち入り検査、艇長会議の後、出国手続き。
午後、厳原を出港し、上島と下島の間を東から西に抜ける。まず三浦湾に入り、万関(まんぜき)瀬戸を通って浅茅(あそう)に出る。そこで夜まで宴会と休憩。
夜中、浅茅湾を出て対馬の西側を北上。

5月1日 朝、釜山のヨット競技場(ハーバー)に入港。ハーバーは釜山の中心よりも西側に位置する海雲台(ヘウンデ)地区にある。入国手続きの後、あかすり。

5月2日 日韓親善釜山レース(ブイ回り)。風は23ノット、親善レースにはちょっと厳しいコンディション(動画あり)。操船をあやまって衝突する船もいくつか。このレース3位となり、賞金400万ウォン(税引前)をゲット。夕方から艇長会議、続いて前夜祭。

5月3日 アリランレース本番。朝からハーバーで出国手続き。レースは正午スタートなるも、いい風の中を2回もゼネリコになり、スタートしたのは30分後。早くフィニッシュしたいのに!
レースは終始穏やかなコンディションで、ジェネカーの1本コース。対馬の東側を通って...

5月4日 朝6時ごろ、博多湾の入口近くまで来る。そこから風がどんどん弱くなり、ほとんど無風となる。結局フィニッシュしたのは朝10時ごろ。すぐに入国手続き。船はレースメンバーの一部が残って広島の観音マリーナまで回航。私は車で唐津へ。
唐津へ向かう途中、A川さんから、唐津風待ちのメールが入る。間に合うぞ!  午後1時ごろ、唐津着、プレワールドに合流。その日は1レース。その後、5月6日まで唐津プレワールド。 5月7日の朝、車で大阪に戻る。

5月9日 帰りの回航。朝、新幹線で広島へ。観音マリーナから出航。天気もよく、穏やかな回航日和。帰りはノンストップで音戸瀬戸、宮窪瀬戸、備讃瀬戸航路、小豆島の南、明石海峡を通って西宮へ。

5月10日 午後、新西宮YHに到着。船の掃除をして2週間にわたるキャンペーン終了。

印象に残ったこと 2点。

1. 韓国の発展
釜山入港時、沖合から釜山の街を眺めると、湾岸を走る高速道路、橋、観覧車、そして林立するビル群が目に入る。どれもまだ新しく、近年、急速に国力を充実させてきたことがうかがえる。もし、昔の海賊が朝鮮半島を攻めようと釜山沖まで来てこの光景を見たなら、恐れをなして引き返すに違いない。

2. 対馬の特殊性
対馬は長さが40マイル、九州~朝鮮半島間の海峡の1/3を塞ぐ。対馬の南端から九州まで45マイル(途中に壱岐)、対馬の北端から朝鮮半島(釜山)まで30マイル。対馬は九州より朝鮮半島に近く、さらに朝鮮半島から見ると、済州島よりも対馬のほうが近い。対馬の両側はいずれも国際海峡で外国船舶の航行は自由。浅茅湾にはかつて旧・帝国海軍の基地があり、現在は海自が駐屯。対馬は、その存在の神秘性とともに、地理的なデリケートさを合わせ持つ、きわめて特殊な島であるといえる。


大会サイト



厳原沖 厳原港
厳原(いずはら)
初めて見る対馬。博多~厳原間は65マイル、10時間ほどの距離。[画像クリックで拡大]
厳原港
港の奥に泊めたレース艇。出国を前にしばし休息。[画像クリックで拡大]
厳原港 万関瀬戸
厳原港
天気がよく、5月の連休なのに夏休みのよう。白い建物は税関や入国管理局などが入る合同庁舎。[画像クリックで拡大]
万関(まんぜき)瀬戸
ここで対馬の上島と下島が分かれる。旧・帝国海軍が掘削した運河。幅40m。[画像クリックで拡大]
浅茅湾 大口瀬戸
浅茅(あそう)
対馬の上島と下島の間にある神秘的な平水域。外洋の真ん中にこのような場所があることに驚かされる。[画像クリックで拡大]
大口瀬戸
浅茅湾の出口。この向こうは朝鮮海峡。[画像クリックで拡大]
釜山沖 入港フラッグ
釜山沖
浅茅湾から釜山までわずか45マイル、隣の国の近さを実感する。[画像クリックで拡大]
入港フラッグ
マストには入国先の国旗を掲げる。写真には写っていないが船尾には国籍をあらわす日の丸。黄色の旗は国際信号旗のQ旗で、「本船は健康である、検疫(quarantine)交通許可証を交付されたい」の意。
釜山沖 海雲台ヨット競技場
釜山沖
海雲台ヨット競技場の沖合。国力を見せつけんがばかりにビルが林立し、高速道路が走る。右の小山の右側の海面が日韓親善レースの海面、かつ、アリランレースのスタート地点。[画像クリックで拡大]
海雲台(ヘウンデ)ヨット競技場
臨時桟橋に泊めた日本からの参加艇。[画像クリックで拡大]
海雲台ヨット競技場 対馬沖
海雲台ヨット競技場
プレジャーボートにマンション群。釜山のリゾート地。[画像クリックで拡大]
アリランレース
日没前、対馬の東側を走る。対馬は南北40マイル、玄界灘にドカンと横たわる。[画像クリックで拡大]




© 2009  Laser Ashiya Fleet, All Rights Reserved.